芸術の誘惑

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亡国の芸術王が曰く「絶望こそ芸術の源泉である」と。

その声明は多くの悲劇を、そして芸術を生んだ。
絶望を描いた絵画、希望の英雄譚。
人々の心は、かつてなく揺れ動き
そして、かつてなく芸術を渇望した。

やがて、芸術によって奮起させられた人々は立ち上がった。
王の支配から脱却し、自由を取り戻すために。
戦いは熾烈を極めた。長きにわたる戦いは多くの犠牲者を生む。
人々は傷つき士気が下がる事もあった。
それでも、人々は芸術に励まされ幾度となく立ち上がることができた。

人々は、ようやく王の元に辿り着いた。
王は愉快そうに笑う。
「余の芸術は甘美であり、貴様らに希望を与えたであろう」
人々は王の喉元に剣を突き立てた。

王は哀れむように言い放つ。
「貴様らの本当の絶望が始まる」

平和は長く続かなかった。
芸術なき世に人々は絶望したのだ。
そして、人々は口にする。「絶望こそ芸術の源泉である」と。
ファンタジー
公開:22/02/07 03:25

laskey

手間でなければ、コメントを残していただけると助かります。
しっかり読んで今後の糧とします。極々短い感想でも結構です!

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