タイム・ハンター

「新入り君さ、覚えておき。時間ってのは追われるんじゃなく、追ってなんぼのものよ」

高校生の頃、生まれて初めて働いたハンバーガー店でリーダー格の先輩にそう注意されたことがある。冷凍のビーフパテ12枚を一度に完璧に焼く技術で店長からも一目置かれていた彼は、パテの焼き加減を知らせるタイマー音をボケっと待っていたオレに我慢ならなかったらしい。「アホ、焼けるのを待つな。もっと攻めていけ」

当時はまったく意味がわからなかったが、タイム・ハンターになった今ではその言葉の重みが理解できる。時間に追われる現代人に代わり、時間を追い落とすのがオレの仕事だ。依頼人はタイトな納期を抱えている業界に多い。どうやるかは企業秘密だが、業務の無駄を徹底的に省き、浮いた工数で納期短縮を実現するコンサル業のようなものさ。時には彼らの発注元を黙らせる汚れ仕事も引き受けるが、口外できる話じゃない。ま、時は金なりってことだな。