涙が透明になったわけ

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大昔、涙は水色だった。しかし、どんな時も水色では、人の心の本当のところが分かりづらいという人間の苦情を受けて、神は感情ごとに涙を七色に分けた。人間は喜んだ。

ある日、少女の叔母が死んだ。少女は叔母に養われながら、酷いいじめを受けていたため、ほっとして、葬式で嬉し涙を流した。嬉しい色の涙を流した少女は、人々に恩知らずだと非難され、行き場を失い、ついには自ら命を絶った。

一方、金満家の男は、涙の色を偽ることができる目薬を開発させた。世間が求める涙の色に変えられるものだ。この高価な目薬は飛ぶように売れ、この男はますます金持ちになった。

神はこれらを見て大いに落胆し、涙の色を透明にした。人々は再び、自らの心と頭を使わなければ、他人の心が分からなくなった。それどころか、無色だから泣いているのかどうかさえ分からない。

人間に更なる孤独が訪れたが、大切な心を侵されることもなくなった。
その他
公開:22/02/03 14:48

kidohe

「蝋燭」が人生初作品、初投稿です。
よろしくお願いします。

普段は、韓国(アジア)ドラマ・映画の字幕監修者として働いています。

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