手繰り寄せる

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 甘くてほろりと苦いチョコを貰った。
 私の好きなやつ。それを口に含んだまま、差し出されたガムまで欲張って口に放り込んだのは間違いだった。
 
 幼かった日、まるで豆電球を灯した発明家のように氷に覆われた大陸を発見した冒険家のように目を輝かせてあの子が教えてくれたのに。
「ガムとチョコを一緒に食べるとね、ガムが無くなるの! ねぇ、知ってた? 知らなかったでしょ!」
 知らなかった。私も大層驚いて、他の友達や家族に話してまわったんだっけ。
 
 
 口の中でどろどろになったガム。こうなることを私は知っていたはずだ。でも忘れてしまった。
 ただ時間がすぎる毎に音も風景も何もかもがゴム風船に詰められ、また時間が過ぎればするりと空の果てへと飛んでいく。
 ほんの些細なことでも色鮮やかに蘇るように、どこまでも続く糸だけ垂らして。
青春
公開:22/02/03 14:11

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