肩の力を抜く

0
1

綺羅綺羅と煌めく銀砂を振り撒いたような空に、ぽっかりと浮かぶ望月。
小舟が揺蕩い、水面に映った像は漣で揺れる。
その儚い姿に空虚の心が充たされていく。
杯を一息に呷り、酒精の混じった息を長く吐く。
誰にも邪魔されぬ至福の刻。俗世の鬱陶しさから解放される僅かな刻。
とある歌人のように、月を取る為に湖へと墜ちて溺れるのも一興かもしれないと、戯れに思いつつも実行出来ないのは、私を雁字搦めにする現世の縁があるからだ。
余は、これ以上は無い程の地位も名誉も生まれつき与えられている。それに相応しく在らねばならぬ重責から逃れられぬ天命を背負って生まれたのが余という存在である。
余が私であれるこの刻を、今は愉しもう。
その他
公開:22/02/03 12:00

揚羽( 日本 )

物書きの端くれになりたい一般人E

空想の世界で遊ぶことが好き

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容