紺いろポストと愛せぬツマ

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娘は真新しい色鉛筆を握りしめ、チラシをぐりぐりと塗りつぶしている。
「すまない、どうしても愛せないんだ。」
「あなた。」
妻は物言いたげにボクに声をかけ、娘を見た。娘は場違いに無邪気な笑顔で妻に見せに行く。
「わかってる、支えてくれてるんだってこと。ツマあってのこのっ」
遮るように妻は言う
「わかってた!気付いていたわ。ずっと、罪悪感いっぱいの顔してたもの。だから、私、貰ってきたの。」
妻は一枚の紙を差し出した。
それは娘が塗り潰していたチラシだ。
チラシの文字の『コン』の部分だけ紺色に塗り潰してある。
「市からの補助があるんだって、これであなたも辛い思いしなくて済むわ。」
優しい声の妻と、ともに笑った。娘はカタカナが読めるようになり、新しい色鉛筆に嬉しそうだ。ボクの罪悪感は少しだけ軽くなり、ドリップで紅く染まったツマは大地へ帰ることとなった。
その他
公開:22/02/02 23:27
日常 環境 家庭

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