餃子くんの無限の未来

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餃子くんは、自らの生を嘆いていた。かつて、自分は何にでもなれると思っていたのだ。水餃子、蒸し餃子、揚げ餃子……無限の未来があると信じていた。
しかし現実は甘くなかった。餃子くんが生まれたのはラーメン屋の厨房だ。彼は所詮、添え物だった。

ある朝、餃子くんは、もっと餃子をプッシュすべきだと店の親父に意見した。店主は激怒した。サイドメニューごときに大事なラーメンの仕込みを邪魔されたからだ。怒りのあまり残酷な事実を口走った。
「冷凍餃子のくせに偉そうな口きくな!」
そう、餃子くんは、焼き餃子になるべく作られた存在だったのだ。無限の未来などハナからなかった。彼は絶望で言葉を失った。
そのときだ。ラジオからあの曲が流れたのは。
「毎日 毎日 僕らは鉄板の〜」
餃子くんは自分の背を見た。そうだ、僕には羽根がある。茶色い翼を広げ、新しい世界へ飛び立った。
彼の前には間違いなく、無限の未来が広がっていた。
ファンタジー
公開:22/02/03 23:14
深夜に見たらダメなやつ

エス氏( 青森 )

落語とか漫才とかが好きなので、クスッと笑えてオチが綺麗なものを書こうと頑張っています。
よろしくお願いします。

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