しょうかき

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「ねぇママ、なんでうちにはこんなにいっぱいかきがあるの?」
娘の一言に、昔の記憶が蘇る——。

「ねぇママ、きょうがっこうでうちにあるかきのことはなしたらみんなにバカにされた」
25年前のある日、私は母に尋ねた。私の家には、常に牡蠣があった。それも小さい実のものばかり。
「みんなは知らないのね。牡蠣が火事のときに役立つことを」と母は言った。「小さい牡蠣で『小牡蠣』、つまりこれを火元にばら撒けば火を消す道具になるの。そしてしばらくして火が消えると、ばら撒いた牡蠣がいい感じで焼けてるからみんなで牡蠣パーティができるのよ」
『パーティ』という言葉に一瞬心が躍ったが、子どもの私は牡蠣が苦手だった。家中いつも海のにおいがして気持ち悪かった。
でも、あれから25年も経つと、当時の母の気持ちがよくわかる——。

「ねえどうして?」
不思議そうに聞く娘に私は、
「大人になればわかるわよ」
その他
公開:22/02/02 17:00

雪宮冬馬

日本生まれ日本育ち。年齢約20代。まだまだこれからの男です。
noteでもショートショート書いてます。
よろしくお願いします。

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