犯罪者たち

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「あの婆さんが見えるか」のっぽが言った。
「ああこっちに歩いてくるぜ。それがどうしたね」ちびが言った。
「鞄を持ってるだろ。きっと財布が入ってるはずだ。それを盗むんだよ」
「でもどうやって」
「お前が婆さんにぶつかって転ばせる。その隙に俺が財布を盗るのさ」
「うまくいくかな」
「耄碌婆さんだ。気づきゃしないって」

二人はさり気なく老婆に近づいた。
ちびが勢いよくぶつかると老婆は転んで鞄を落とした。
「ごめんなさい。よそ見をしてたもんで」
「いえいいんですよ」
老婆は立ち去った。

二人は計画成功にほくそ笑んだ。
だがその喜びは長続きしなかった。盗った財布が空っぽだったのだ。
その時背後で声がした。「すみません」
振り返ると警官がいた。
「今お婆さんと話してましたね」
「それが何か」
「あの婆さんは有名なスリでね、あなたの財布は大丈夫ですか」
ちびがポケットを探ると自分の財布が消えていた。
ミステリー・推理
公開:22/01/29 23:54

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