なんでも知ってる男

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 なんでも知ってる男がいた。
 男は何を尋ねられても「知ってる」と答えた。どんな難問でも、あらゆる出来事にも「知ってる」と答えた。ゲームをやると、勝っても負けても「知ってた」と言った。二択問題には「どっちでもいい」と答え、答えが発表されると「知ってた」と言った。
 男はなぜか金には不自由していなかった。公園で、パンを齧り酒を飲みながら毎日空を眺めていた。
 「退屈じゃないか?」
 「退屈だよ」男は答えた。
 「あんた本当になんでも知ってるのか?」相手は意地悪い笑みを浮かべた。「自分が何のために生きてるのかすら分かってなさそうだ」
 「知ってるよ」男は答えた。「知ってる」
 ある日、核戦争が起こった。たちまち人類は滅んだ。
 瓦礫の山から這い出した男はため息をついた。
 「知ってた」
 男の全身が光に包まれ浮かび上がった。何十億という魂がその後を追い、裁きを受けるためどこまでも上っていった。
ファンタジー
公開:22/01/31 03:28

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