ようせいさん

「やっぱりようせいさんっているんだね！　それもたくさん！」
目をキラキラ輝かせながら私に向かって言う5歳のうちの娘が愛らしい。最近、娘のこのセリフをよく聞くようになった。きっと毎週見てるアニメかなにかに妖精が出てくるからそう言っているのだろう。現実に妖精なんているわけないのに、実在すると信じている娘はやっぱりかわいい。
あるとき、娘とテレビを見ていたときのこと。
「あ！　このひと、ようせいさんのひとりだよ！」
そう言って、娘がテレビに映った芸能人を指差した。
「この人は人間だよ」
「ちがうもん！　このまえこのひと、じぶんのことようせいだっていってたもん！」
何のことだろうかと思っていたら、ふとあることを思い出した。そういえばこの人、1ヶ月ほど前にニュースで、コロナに感染したって言ってたな。
私はようやく、娘が言ってた「ようせい」の正体がわかったが、しばらく黙っておくことにしよう。