急性救世腫

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勇者タカシの腕のイボは日に日に大きくなっている。痛みはないが周りの者が心配するので、タカシは町の医者にかかった。

「急性救世腫ですね」
このイボは、宿主に世界を救う力を与えるのだという。魔物や山賊とわたり合うほどの力を、何の対価も無しに手にできるのだ。
言われてみれば、タカシがとつぜん超能力に目覚めた時期と、腕にイボを見つけた時期はたしかに一致する。
政府高官の不正を暴いたのも、国王から褒美としてルビーの指輪を賜ったのも、全てこのイボのおかげというわけだ。

しかし、良いことばかりではない。今のタカシは、ジェットエンジンを搭載した自転車のようなもの。急激な変化に心身が追いつかず、壊れてもおかしくないのだ。
医者はイボの除去手術を勧めた。
「スポンサーがついてますので、お代は結構ですよ」

手術の同意書を記入するタカシに、医者は冷たい笑みを浮かべる。その指には、ルビーの腕輪が光っていた。
ファンタジー
公開:22/01/27 23:00
更新:22/01/28 00:25

エス氏( 青森 )

落語とか漫才とかが好きなので、クスッと笑えてオチが綺麗なものを書こうと頑張っています。
よろしくお願いします。

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