黒コート

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通学の時必ず同じ車両にいる男性がいる。歳は私と同じくらいか。

 真っ黒な外套。髪の毛も染めてないから黒い。
 いつも文庫本を真剣な顔で読んでいる。

あの感じからすると読んでるのは純文学かな。それも芥川とか太宰とかじゃなくて梶井だと思う。見るからに繊細な青年だ。文学部の学生かもしれない。

実は私も最近、本を読むようにしている。正直何を言いたいのか分からないけど響きが良いので純文学を嗜んでいる。

若者の活字離れが話題となっている中で「堕落論」とか読んでいる女子がいたら結構素敵でしょ?

大学の最寄り駅に着くと彼は文庫本を脇にかかえながらキャンパスを目指す。

私は文学青年というものに憧れを持っていた。

あれ?青年の本が落ちた。

「モテる男になるための6つの法
則」

その時、数秒間だけ私はこの空間から堕落したのだ。
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公開:22/01/25 17:06

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