詩になる牛
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「あのひと詩人になったらしいよ」
私は食肉として吊られている精肉店で別れた夫の噂話を耳にした。
夫だったUYはコーラスグループのような重層的な美声で言葉を幾度も反芻しながら話すウシビトで、私は彼のおかげで甘い陶酔の日々を過ごした。別れはしたがそれは互いの表現を深めるために次の扉を開けたにすぎない。
精肉店で身を吊るす食肉緊縛プレイは私が毎週末に行っている詩のパフォーマンスのひとつで、タイトルは「弛緩する午後」。今年からはじめた牛シリーズの三作目にあたる。一作目は「信用と放牧」という朗読と草食のパフォーマンスを千葉の牧場で行った。二作目は「牛飼いの亡命、乳化する夜」というアクションペインティングを乳牛と柴犬がまどろむ和歌山の牛舎で。
私は夫の歌が好きだった。ウシビトの口は毛穴ように小さくいくつもあって声を重ねるように歌う。UY。彼の名前は打ち身のような夕焼け。
そうか。彼は詩人になったのか。
私は食肉として吊られている精肉店で別れた夫の噂話を耳にした。
夫だったUYはコーラスグループのような重層的な美声で言葉を幾度も反芻しながら話すウシビトで、私は彼のおかげで甘い陶酔の日々を過ごした。別れはしたがそれは互いの表現を深めるために次の扉を開けたにすぎない。
精肉店で身を吊るす食肉緊縛プレイは私が毎週末に行っている詩のパフォーマンスのひとつで、タイトルは「弛緩する午後」。今年からはじめた牛シリーズの三作目にあたる。一作目は「信用と放牧」という朗読と草食のパフォーマンスを千葉の牧場で行った。二作目は「牛飼いの亡命、乳化する夜」というアクションペインティングを乳牛と柴犬がまどろむ和歌山の牛舎で。
私は夫の歌が好きだった。ウシビトの口は毛穴ように小さくいくつもあって声を重ねるように歌う。UY。彼の名前は打ち身のような夕焼け。
そうか。彼は詩人になったのか。
公開:22/01/25 11:40
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