純粋なタータン(「タータンチェックの委員会」からの連想)

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 タータンチェックは色の異なる縦糸と横糸で構成される。二つの糸が直交し色は混ざり合い、美しいパターンを形成する。本場スコットランドでは先祖伝来のパターンは自らの出自を証明するものとしても意味を持つ。
 一方、概念としてのタータンチェックは純粋な構造体だ。時空を構成する場そのものによって織られたタータンは平面を格子状に再配置する。空間方法に織られた構造を時間面にずらすと、未来方向に可能性のモザイクがきらめくのを見ることができる。
 こうした純粋なタータンに関する技術はとうに失われている。職人たちは時空の布地を過去へと織進め、完成と共に存在を忘却の彼方へと消し去ってしまったのだ。委員会の女性が見せてくれたのは残された貴重な一枚で、触れようとした手の表面の次元を繰り込み吸い付くように浮き上がる。
 「ひんやりしてますね」
 「そうです」女性は大きく頷いた。「純粋なタータンチェックは冷たいのです」
SF
公開:22/01/25 04:42

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