紙の村(「工作するふるさと」からの連想)
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岐阜県〇〇郡の山奥に、かつて紙で作られた集落があった。倒木で塞がれた山道を抜け、朽ちた神社の鳥居をくぐると、急に道が開け、いくつもの家が立ち並ぶ、人の住む立派な村が現れる。しかしこれらはみな紙工作の偽物で、家はダンボール、村人は紙工作、庭の畑に実を結ぶ真っ赤なトマトは折り紙で、麦わら帽子を被った白いワンピースの少女は画用紙に色鉛筆で描かれている。その証拠に急な夕立があると家はひしゃげ、村人に塗られた絵の具は流れ出し目鼻を失った人々が右往左往する光景が見られる。
ほんの数十年前まで、迷い込んだ夏休みの少年を取って食う妖怪が潜んでいたのだが、今では妖怪もいなくなり、妖術で作られた集落だけが残された。ワンピースの少女も日に焼けて、完全に色落ちしてしまったが、それでも稀に訪問者が現れると、雨に打たれ波打った画用紙の中で、かすれて見えなくなった姿で、物珍しそうにじっとこちらを見つめているのだ。
ほんの数十年前まで、迷い込んだ夏休みの少年を取って食う妖怪が潜んでいたのだが、今では妖怪もいなくなり、妖術で作られた集落だけが残された。ワンピースの少女も日に焼けて、完全に色落ちしてしまったが、それでも稀に訪問者が現れると、雨に打たれ波打った画用紙の中で、かすれて見えなくなった姿で、物珍しそうにじっとこちらを見つめているのだ。
ファンタジー
公開:22/01/25 02:32
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