帰り道

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マスクの隙間から白い息が漏れる。
最近、急に冷え込みが厳しくなった。朝の天気予報でも、本州の山の方は雪が降ったと言っていた。この辺りでは、雪がちらついただけで、子供は大騒ぎ。同じ日本でも、これほど違うのは地理的な理由だと、先生が教えてくれたのが懐かしい。
乾いた空気に自分の足音が響く。白い欠片がちらつき始める。
少し先の電柱の下、白く儚げな美女が佇んでいる。
「え、と。どうしましたか?」
「人を待っているのですが、寒くて…少し手を握ってくれませんか?」
普通、見ず知らずの手を取ることはしない。
しかし、私の思考は凍り、たおやかな彼女の手を取ることに、迷いは無い。
そのまま私が手袋を外し、彼女の手を握った瞬間、パキパキッと私の手を始点に全身を霜が蹂躙し、私の意識は白く白く…。
ぎこちなく動かした目玉に焼き付いた彼女の笑みは、艶やかに、凄惨に、美しい。

「ありがとう。優しい犠牲者さん。」
ホラー
公開:22/01/26 13:31

揚羽( 日本 )

物書きの端くれになりたい一般人E

空想の世界で遊ぶことが好き

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