月下談話

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「今日もダメだったよ」
「そっか。今日もお疲れ様」
 
彼は今日もお疲れのようだ。
でもその顔のはどこか清々しい。

「難しいね。もうどこも満席みたいだ。僕が座れる椅子はないのかもしれない」
「たくさんいるものねこの星の人は」

この星に来て数年間、こんな風なやり取りがずっと続いている。
でも、私は何だかほっとするのだ。
彼もそうであったら嬉しい。

「今日も月が良く見えるよ。ベランダで飲もうか?」
私の面白味はないけど特別な提案。

「ありがとう。じゃあハイボールでも飲もうかな」

私たちは春の匂いがする風を身に感じながら月の下で静かな乾杯をする。

この星の人間じゃないから他の人たちと仲良くなるのは難しい。

でも、私たちは今夜も月の向こう側を夢みている。
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公開:22/01/26 08:04
更新:22/01/26 11:57

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