編み物

2
2

今時、手編みのマフラーだなんて……。俺は彼女からのプレゼントに戸惑っていた。どうせもらうならブランド物のマフラーでも買ってくれたらよかったのに。厳しい寒さが続く今日は、ついに雪が降り始めた。マフラーしてきて正解だった。
「……まあ温かいけど」
俺はどうも昔から素直になれない性格だ。どこかひねくれている。彼女から手編みのマフラーを受け取った時も、そっけない返事をしてしまった。
「これ。私が編んだマフラーなんだけど」
「そか。ありがと」
「風邪ひかないようにね」
もっとちゃんとお礼を言っておけばよかった。どうして俺は、いつもいつも大切な人に伝えられないまま終わってしまうんだ。母が病気で亡くなった時もそうだ。今回の彼女の交通事故も。彼女はまだ意識不明の重体だ。

俺は雪の中、彼女の入院する病院へ行った。

「おはよう」

彼女がベットの上で笑っていた。俺は泣きながら彼女を無言で抱きしめた。
公開:22/01/23 10:10

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

https://youtu.be/frouU2nCPYI

・魔法のiらんど大賞2021小説大賞。大人恋愛部門「彼女の作り方」が予選通過

〇サウンドノベルゲーム版作品(無料プレイ可)

ブラウン・シュガー
https://novelchan.novelsphere.jp/38739/

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容