俺の尊敬する人

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 ついにこの日がやってきたのだ。
 まず、顔と歯を丁寧に洗い、スーツに着替えた。
「よし、準備万端だ!」
「あなたどこいくの」
「買い物だよ」
「・・・?」
「では、行ってくる!」
 胸を前に突き出し、堂々とゆっくり歩く。胸の高まりが止まらない。
落ち着けよ、俺。
 家から一番近いスーパーに着いた。

「おかえり」
「ただいま!」
「そんな格好で何を買ってきたの?」
「桃だよ、ほら」
 白い袋を掲げ、妻に渡した。
「なんで桃なの?しかも一つだけ。そんな格好してるから車でも買いに行くのかと思ったわよ」
「夏菜子、この桃はな、どこにでも売ってる桃なんだ」
「だから?」
「前から食べたかったんだよ」
「いや、意味が分からない。なんかもう怖いわ、あなたが」

 俺は、桃をダイニングテーブルの真ん中に飾った。細長い花瓶に乗せて。

 3月3日、俺は妻と離婚した。




 
その他
公開:22/01/23 04:31

熊白ヨイ

よろしくお願いします。

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