高飛車な母

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私の母は没落貴族のご令嬢。家柄は失ってもその気品は失っていない。
私の父は自動車工場の整備長。寡黙な人で滅多に表に出てこない。
そんな父に代わり、母は営業を買って出た。将棋の戦術・高飛車宜しく相手の歩みに先んじてその懐に入り込もうとする。
貴族階級はお茶会仕込みの処世術。それを活かし次々と契約を勝ち取っていく。今日も母の高笑いが事務所に木霊する。
それを妬む同業者。嫌味を言われても一歩も引かない母。高飛車な態度で相手を威圧させる。
口車とは乗せるもので乗るものではない。私のマイカーは夫の肩車で十分よ、と父に向って愛車宣言。
照れる父は母の愛が燃料となり今日も仕事に拍車をかける。冷やかす社員の声がラジエーター。熱暴走しないよう気を付ける。
今日も母は高い場所に立って地上を見下ろす。その姿は棋士というより騎士。皆の生活を守る為、輔車相依る。
火の車になんて乗らせないとブレない車軸が自慢の母だ。
公開:22/01/22 20:30

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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