閑古鳥

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客がなかなか来ない飲食店があった。
ある日、ふくよかな笑顔が特徴的な老人が来店した。
老人は、ガラガラの店内を見渡しながら、こう言った。
「店主、この店には閑古鳥が鳴いているから客が来ないんだよ」
「そういえば、『カッコウ、カッコウ』という鳥の鳴き声が店のあちらこちらから聞こえてくることがありますけれど、姿形がなく空耳かと思っていました」
すると、急に老人が警笛らしきものを取り出して「ピーーッ!」と勢いよく吹いた。
その瞬間、鳥が店の外へと一斉にバタバタと羽ばたいていくような音が聞こえてきた。
「結構な閑古鳥がいたようだ。もともとこの店にやって来た貧乏神が呼び寄せたようだが、今では閑古鳥同士で居心地の良い場所と評判になり、止まり木代わりにしていたようだ。みんな店から出ていったから、これからこの店は繁盛するよ」
「儂が誰だって、人間は儂を七福神の一員、商売繁盛の神『えびす様』って呼んでいる」
その他
公開:22/01/22 07:33
飲食店 老人 店主 閑古鳥が鳴いている カッコウ 鳴き声 空耳 警笛

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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