時計と記憶

慎重に２つの薬品を混ぜ合わせる。
ボンっ！と破裂音をさせ、混ぜ合わせた薬品が真っ黒なきのこ雲を作った。また失敗だ…
私の頭が見事なアフロヘアに変わった。ショートボブの私にこんな毛量はない。この髪の毛が一体どこから来ているのか不思議でならない…
不思議と言えばこの髪は０時を過ぎると何故か元の髪型に戻る。
まるで童話のようだと思い、薬に『シンデレラボム』と名前を付けた。
失敗かと思われたこの薬品だがパーティグッズとしては重宝している。失敗作でも誰かに喜んでもらえるのならまだマシか…

ある夜、日付も変わろうと言う時間に同僚が私の研究室を訪れた。
その頭は見事なアフロヘア。何だ？私の失敗作を笑いに来たのか？
０時になり、同僚の髪の毛が元に戻る。頭の上に指輪が載っていた。
「俺と結婚を前提に付き合って下さい」
まさかこんな使い方をされるとは…シンデレラボムは私の記憶に大きく残る失敗作となった。