時計と記憶

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死後、私は地獄へと連れてこられた。自分で言うものなんだが私は地獄に落とされるような悪事は一切していない。何故私は問答無用で地獄に連れてこられたんだ?
「すぐに分かりますよ」
人懐っこい顔の鬼が金属探知機のようなものを私の体に這わせる。
「あった!少しくすぐったいですよ」
探知機の反応を見て鬼が私の腕に手を沈み込ませる。出てきたのは精緻な作りの高級そうな時計。
「おっ!これは良いものですね。貴方、生前は技師か何か?」
叩き上げで大工をしていました、と答えると鬼は頷く。
「人は体内に時計を持って生まれてくるんです。その時計はその人が人生で一番重要だった場所に宿ります。貴方の人生は良きものだったんですね。それを記憶しているこの時計が証拠です。悪い人生だと粗悪な時計が出て来るので一目で分かりますよ」
さすが地獄の鬼。鑑定眼がしっかりしている。
鬼の目を見るとアンティーク調の美しい時計が動いていた。
公開:22/01/20 21:04

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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