裸の文庫本
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爺ちゃんは、読書家だった。俺が爺ちゃんの家を訪れた時、いつも本を読んでいた。何を読んでいるのか聞いたことがある。爺ちゃんは、小説だと言った。確か『眠れない町で』というタイトルだったと思う。爺ちゃんは『眠れない町で』を読んでいる時、帯やカバーはなく、裸のまま保存していた。
「爺ちゃん、この本のカバーは?」
「ボロボロになったから捨てたんじゃよ」
ボロボロになるまで読み込んだのか。何度も何度も。
しかし俺は気づいてしまった。爺ちゃんは読書家だと思っていたのに、持っている本の種類が少なかった。『眠れない町で』を何度も読んでいるらしい。
「ねぇ。爺ちゃん。眠れない町でって面白いの?」
「ん。ああ。これか。これはな――」
爺ちゃんが昔、戦争で亡くなった戦友が書いた小説だと教えてくれた。戦争当時の事を題材にした小説らしい。なるほど。昔の懐かしい気持ちは、どんな小説よりも面白いのか。
「爺ちゃん、この本のカバーは?」
「ボロボロになったから捨てたんじゃよ」
ボロボロになるまで読み込んだのか。何度も何度も。
しかし俺は気づいてしまった。爺ちゃんは読書家だと思っていたのに、持っている本の種類が少なかった。『眠れない町で』を何度も読んでいるらしい。
「ねぇ。爺ちゃん。眠れない町でって面白いの?」
「ん。ああ。これか。これはな――」
爺ちゃんが昔、戦争で亡くなった戦友が書いた小説だと教えてくれた。戦争当時の事を題材にした小説らしい。なるほど。昔の懐かしい気持ちは、どんな小説よりも面白いのか。
公開:22/01/20 09:31
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