下り電車

「この電車は人生下り電車です、次は◯◯大学、△△大学の順に停まります」　車内アナウンスが流れ、電車は走り出した。
僕は人生を遡るチャンスを得ることが出来た、やり直す場所は決まっている。
「次は◯◯大学、エリート線へのお乗り換えはこちらになります」　ここだ、ここで無理したばかりに僕は心を病み、自殺したんだ、二度と行くものか。
「次は△△大学、Ｃランク線へのお乗り換えとなります」　こでいい、ここならコンプレックスを抱えることもなく、学業もサークルも恋愛だって楽しめる。
下りホームの駅員が声をかけてきた。
「当時の自分に戻るのですよ。もう少し戻った方が……」
「ええ、いいんです、ここでやり直したいんです」　

頭の中が白くなった。
僕は受験に向かうところだった。

「ここは滑り止めだからな、◯◯大に受かったら、もう来ることもないだろう」
当時の自分に、その後を予想出来るはずもなかった。