時計と記憶

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量販店で妻の買い物を待っている間、私は休憩所の片隅に置かれた便せんに目を奪われていた。
『日頃の感謝を伝えてみませんか?』か…
便せんを1枚破り取り、ペンを走らせる。
これまで妻に手紙なんて書いた事はなかったが、今は無性に書きたい気分だ。
これまでの感謝を綴り、帰宅後そっとテーブルの上に置いた。

「あなた、あの手紙は量販店で待っている間に書いてくれたのね」
何でそんな事が分かるんだ?
「この便せん、片隅にカレンダーと時計の絵が描かれえているでしょ。これは貴方が気持ちを伝えたいと思い立ったその時、その時間を切り取ったものなの。だから時計とカレンダーがあなたが手紙を書きたいと思った、その日その時間を示しているのよ」
知らなかった…お前は何でも知っているな。
妻は悪戯っぽく笑う。
「いつかあなたが手紙を書いてくれると信じて、あの場所で待たせていた甲斐があったわ」
そこまで計算していたのか…
公開:22/01/18 20:30

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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