時計と記憶

空から巨大な時計が落ちてきた。
宇宙から飛来した大きな時計。地面に激突しても壊れない頑丈さに世界が注目した。
未知の鉱物で出来た時計。シェルターにこの技術を流用したい！
そんな建前で世界中の研究者が時計を調べ始める。
だが時を同じくして太陽がおかしくなった。昼に沈み夜に昇ったかと思えば、１日に何度も地球を回る日もある。
さらに狂った太陽は地球に近づいているという。
多くの研究者が時計の調査を止め、太陽の調査に乗り出した。
そんな中、時計を調査していた研究者が言った。
「この時計、太陽のものじゃないか？」
研究者は時計をロケットに括り付け、宇宙へ、太陽の下へと飛ばした。
太陽は時計を受け取ると地球から遠ざかって行く。
「太陽はあの時計を見て毎日動いていたのでしょう。あれがないと記憶と感覚に頼るしかないですからね」
自信満々に話す研究者だが、実は月も時計を落としていた事には気づいていなかった。