パックでゴッソリ

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帰宅するなり、私はソファに倒れ込んだ。座面に顔を埋め、奇声を発する。
今日も上司にしこたま怒られた。書類の数字のミスと、業務連絡の漏れと…ああダメだ、思い出したくない。どうも仕事に身が入らないのだ。コーヒーを飲んでもストレッチしても、気分がすっきりしない。
洗面台で化粧を落とし、鏡を覗きこむ。心なしか顔が丸くなった気がする。年末年始の不摂生が原因だろう。数年ぶりに帰った実家は堕落の園だった。
鼻の黒ずみが気になったので、シートパックを貼った。10分ほどしてゆっくり剥がすと、ストーンサークルを彷彿とさせる角栓の群れが現れる。と、そのなかにつやつやした薄桃色のビーズのようなものがあることに気がついた。やがてそれは餅のようにぷーっと膨らんで、ぱちんとはじけた。ほわほわと、うきうきするような甘い香りが広がった。
わかった、これは「お正月気分」だ。
翌日から、私は再び仕事に打ち込めるようになった。
ファンタジー
公開:22/01/19 23:08
更新:22/01/20 12:33

エス氏( 青森 )

落語とか漫才とかが好きなので、クスッと笑えてオチが綺麗なものを書こうと頑張っています。
よろしくお願いします。

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