今ある幸せ

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むかしむかし、ある村に祀られている神様がいました。
その神様は人々の願いを叶えるため、何でも応えてきました。何しろ崇めてくれる人がいなくなったら自分が必要なくなってしまうからです。

でも神様は他力本願な人間たちに愛想を尽き始めました。
いよいよ怒った神様は何も願いを叶えなくなり、村は廃れていき人がいなくなってしまいました。
神様は崇めてくれる人がいなくなってしまったけれど、後悔はしませんでした。以前の過ちから人の願いに何でも応えてはいけないと学んだからです。

数十年が経ち、ボロボロの格好をした旅人が神様の前に現れました。旅人は途中何度も危険な目に合い、ただただ奇跡的に助かったことを喜んでいました。きっと目の前の神様のお陰だと思い何度も感謝を伝えました。

それから数十年後———
一度は廃れてなくなった村に人が大勢集まり、人々はお願いではなく”今ある感謝”を伝えるようになりましたとさ。
ミステリー・推理
公開:22/01/19 23:01

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