時計と記憶

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小学校の頃、野球を頑張る俺に祖父が腕時計をくれた。
大人びたデザインの時計で俺はそれを着けてはさらに練習に打ち込んだ。
学生時代はひたすらに野球に打ち込んだ。プロにはなれなかったが後悔なんてしていない。やりきったのだから。
そんな俺とずっと一緒にあってくれた腕時計。こいつは不思議な事に今まで一度も電池交換をしていない。故障すら只の一度もなく、時間が狂った事もない。最高の相棒だ。
そんな時計が止まったのは俺が社会人となり、社会の歯車に成り下がった頃だ。
そこに情熱はない。毎日が仕事と共に過ぎていく。これが大人なんだと思い込んでいた。
そんなある日、俺は仕事帰りに楽器屋に飾られたギターに一目惚れをした。惹かれるがまま店に入り、ギターを手にする。昔のような情熱を取り戻せそうな気がした。
ギター入門の本を手に帰宅する。
新たな趣味に一歩足を踏み出した俺を祝うかのように腕時計が動きを取り戻していた。
公開:22/01/19 20:56

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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