問答無用の王様

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A国の王様は蚊のように声が小さかった。家来に命令を下しても一度で聞き取ってもらえることの方が少ない。何度も同じ話をさせられて王様はうんざりしていた。
ある日、国じゅうにこんなお触れが出された。
「人の話を聞き返した者は死刑に処す」
街角には憲兵が配備され、人々の会話に聞き耳を立てている。A国民たちは、人の話を注意深く聞き、他人の会話を邪魔しないように小さな声で喋るようになった。国じゅうがお葬式のように静かになり、王様は大変満足していた。
それから数十年が経ち、王様に孫ができた。彼らとの触れ合いが日々の楽しみなのだが、困っていることが一つある。
近ごろ耳が遠くなってしまったのだ。子供の甲高い声が聞き取れない。先のお触れを取り消そうにも、王位は息子に譲ってしまっている。
王様にできることといえば、ただ首振り人形のように、うんうんうなずくだけである。
その他
公開:22/01/16 20:00

エス氏( 青森 )

落語とか漫才とかが好きなので、クスッと笑えてオチが綺麗なものを書こうと頑張っています。
よろしくお願いします。

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