時計と記憶

時計を確認して、ため息が出た。
干支の引継ぎにやってきた寅さん。若くて精力的なのはいいが、どうにもその力を持て余しているらしい。
「丑さん！いい筋肉をしていますね！僕と勝負をしませんか！」
私はこう見えて闘牛出身。肉食動物の代表格、虎と戦えるのならと最初は軽い気持ちだった…
「いや～丑さん！いい勝負でしたね！次は何で勝負します？」
そう言えば昔、虎は千里行って千里帰る生き物だなんて噂を聞いた事がある。
そんな寅さんが１年間、ずっとここでじっとしていられるわけないか…仕方がない。暫くは一緒に…いや、あと１年はここにいたほうが良さそうだ。
何せ次の干支は兎。虎の恰好の獲物だ。
兎が逃げた場合、前倒しになるのか？卯年の次はえ～っと辰年だったか。
もしかして寅さん、龍と戦う為に体づくりをしているんじゃ…ありえる話だ…１２年前も確か同じ事をやっていた…
もう一度時計を確認する。これがあと３４９日か…