時計と記憶

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東京タワー。大阪城。エッフェル塔。凱旋門。ピラミッド。ビッグベンに札幌市時計台。我が家のリビング並ぶ観光地を模したの時計達。
妻はそれを見ては「あの時の料理、美味しかったね」「あの場所の景色、綺麗だったね」と思い出話に花を咲かせる。
僕は「憶えていない」と嘘を吐く。
何せ僕の思い出と言えば、危なっかしい妻から目を離す事が出来ず、ずっと周りや妻を気にしていた記憶ばかりだ。
料理は酒を飲んでへべれけになった妻を介抱した記憶しかない。景色より妻を見つめていた記憶しかない。
だからかな?旅行の思い出と言えば妻の笑顔しか思い浮かばないんだ。
僕も時計達を見ては思い出すよ。あの時の君の笑顔と楽しそうな姿を。
そんな僕に妻は頬を膨らませる。
「じゃあ、コロナが落ち着いたらまた二人で旅行に行きましょ」
妻の言葉に苦笑いを浮かべる。
君ももう少し落ち着いてくれたのなら、僕も料理や景色を楽しめるかな?
公開:22/01/17 20:48

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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