スタードーム

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「ガラスの球体でできたこれは、『スノードーム』に見えるけれど、違うんだ。白い雪らしきものがまったく降っていないだろ」
友人が見せてくれたガラスの球体の中は無色透明だった。
すると、友人は部屋の明かりを消した。
真っ暗な部屋の中でガラスの球体の中がキラキラと光りだし、無数の星らしきものが見えた。
「美しいだろ。このガラスの球体は、地球上の星空を再現できるミニプラネタリウムのような代物さ」
その瞬間、ガラスの球体の中をいくつもの流れ星が通った。
「めったに見られない流星群だ。これこそがガラスの球体がラッキーアイテムの『スタードーム』の異名を持つ由来さ。願い事をひとつ、三度唱えると必ず叶え……」
友人の声が遠のきながら、スタードームの中へと吸い込まれ、満天の星々が輝く夜空の下に一人いた。
願い事を三度唱えたあと流星群が過ぎゆくと、パッと辺りが明るくなり、元の部屋でガラスの球体を握りしめていた。
ファンタジー
公開:22/01/15 07:22
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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