リコール

「リコール製品を探しています。
過充電による発火の恐れがあるため、
そのままご使用頂くのは大変危険です。
製造が2060年の方は至急ご連絡を・・・」

テレビを横目で見ながら、重たい体を起こした。
まったく。製品の不具合を1年以上も隠すなんて、
無責任にも程がある。
流れていたCMの愚痴をこぼし、支度を進める。

5年目になる仕事は、単純作業だけど、自分には向いている。
学生時代は機械学習の講義も受けていたが、てんでダメだった。

よし、準備万端。2087年も残すところ2週間。ラストスパートだ。
それから、今日は帰りに入院中の同期のお見舞いに行く予定がある。

ドアに手をかけた時、腰元が引っ張られた。
いけない。充電を挿しっぱなしだ。
太いプラグをグッと引き抜き、再びドアを開ける。

ふと口から漏れる吐息が白い。
今日も寒そうだ。

シューシュー。
腰からは、黒い煙がのぼり始めていた。