信心校長と信心母さん

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息子の小学校から呼び出しを受けた。応接室に通されたが、床には物が散乱しているし、テーブルの上には虫の死骸。現れたのはジャージ姿の校長と、半ズボンで毛脛丸出しの息子の担任だった。
「人を迎える態勢じゃないですよね、これ」
私は思わず言ってしまった。なぜか目の前の2人が顔を見合わせて吹き出す。校長が口を開いた。
「お母さん、信心婆さまと欲深和尚の昔話をご存知ですか」
あるところに毎日お寺参りをする信心深い婆さまがいた。貧乏でお賽銭ができないせいで欲深い和尚に嫌がらせをされるが、仏様に助けられるという話。
「つまり、お客様をもてなそうという心があれば、飾り立てた部屋もブランドのスーツも必要ないのです」
あんぐりと口を開けている私を尻目に、校長は本題に入った。息子が割った窓ガラスについて話したいという。私はすかさず言った。
「悪事を詫びたいという心があれば、弁償は必要ないですよね?」
その他
公開:22/01/15 23:09
更新:22/01/15 23:26
青森の昔話

エス氏( 青森 )

落語とか漫才とかが好きなので、クスッと笑えてオチが綺麗なものを書こうと頑張っています。
よろしくお願いします。

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