時計と記憶

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バイクを運転する彼の背中にしがみ付き、白い息を吐く。
寒い…思わずギュッと彼を抱きしめる。
いつもは恥ずかしがって手も繋いでくれない彼だが、バイクデートによく誘ってくれる。
この時ばかりは私に「しっかり抱き着くんだぞ」と言ってくれる。
私は彼の大きな背中が大好きだ。その背中に耳を当て、流れゆく風景を見つめる。美しい景色を記憶に焼き付ける。
この時間がずっと続けばいいのになぁ…

バイクを運転する俺の目には背中に抱き着いている彼女の表情が見えない。
だから不安になる。寒くないだろうか?怖くないだろうか?速度を緩め、安全運転で走行する。
いつもは恥ずかしくて手も繋いでやれないが、バイクなら密着しても問題ない。それに出来ればずっとこうしていたい。
同じ速度で走り続けるバイクに時計は必要ない。スピードメーターが時計代わりになる。
…もう少し速度を緩めよう。目的地に到着したら丁度食事時になるように。
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公開:22/01/15 20:38

幸運な野良猫

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元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
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