時計と記憶

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「はい。当時計店では無料で過去に戻る事が出来ますよ」
店員の言葉に俺はニヤリと笑う。
最悪の人生だった。やり直したいと何度も思った。それが可能だと知り、藁にも縋る思いで訪れた時計店。
噂は本当だったんだ。喜ばずにはいられない。
「ちなみに今の記憶を過去に持ち込むには料金が発生します。如何なさいますか?」
店員の説明に唖然とする。金がかかるのか?
「はい。1バイト1円となっております。ちなみにお客様は過去47回とも記憶を持ち込まなかったので、その質問は48回目です」
なんてこった!俺はやり直しても同じ過ちを繰り返していたのか!
分かった!金を用意する!だからそれまで待ってくれ!
「かしこまりました。またのご来店をお待ちしております」
その日から俺はがむしゃらに働いた。
過去を清算するために必死に働き、気がつけば過去に戻る必要のない最高の人生を手に入れていた。
これもあの時計屋のおかげだ。
公開:22/01/12 20:31

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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