パイプ切断器

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今日も白いブースに入る。画面とキーボード。ドアを閉めると沈黙の世界。ここで画面の問題に答える。僕は「解読者」資格を目指して勉強中だ。様々なテキスト情報を読み解く解読者資格である。例えば「自転車にカラスが十羽乗っていた」を読み解くと「硫化アルミナの溶融温度は1000℃以上である」となる。解読には名詞や動詞の意味変換はもちろんだが助詞の扱いにも注意しなければならない。「カラスが」は「硫化アルミナ」であるが「カラスと」なら「財政出動」。それぞれの言葉に注意しながら十問を解くとブースを出て指導教官のところに行く。もう採点が終わっている。「二問、間違い」と薄縁眼鏡の女性教官は冷たい声で言う。「指を出して」と言われるままにパイプ切断器に二本の指を乗せる。パチンパチンと指が切断される。まあ、仕方ない。指はまた生えてくる。女性教官は切断した指をケースに納める。鉛筆のように何本も指が入っている。
その他
公開:22/01/14 10:02

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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