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末っ子である彼はとにかく問題児だった。他の兄弟は真っすぐすくすくと育ってくれたのに、彼だけはいつも斜に構えていて明らかに異質だ。
兄弟たちも彼の事は心配していて、どうしたら素直な子になるかを考えていたが、そんな兄弟たちの気持ちなどいざ知らずといった感じで、彼はあろうことか隣の兄に対し攻撃的になる始末。
流石に目に余るものが出てきたと思った兄弟たちは、話し合いの末、彼との別れを決めた。
思えば彼は可哀そうだった。彼は生まれた時から親を知らなかった。兄弟たちが親代わりだったけど、こんな風に育ってしまったということは、やはり代わりにはなれなかったのだろう。
いよいよ今日が彼とのお別れの日。
さようなら、元気で。
兄弟たちの言葉にも、彼は動揺することもなく相変わらず斜に構えるのだった・・・。
「・・・あの、そろそろいいかな?」
「先生ほ、本当に痛くないんですよね?」
今日は親知らずを抜く日だった。
その他
公開:22/01/11 06:51
更新:22/01/11 06:58

セイロンティー( 鹿児島 )

初めまして。昔から小説を書くのが好きでした。ショートショートの魅力に取り憑かれ、日々ネタ探しに奔走する毎日です。
小説のコンセプトは【ドアノブの静電気くらいの刺激を貴方に】です。
皆様、どうぞ宜しくお願い致します。

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