映らない鏡

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街を彷徨って手頃なビルを見つけた。 グループ引き立て役の私に、ファンは心無い言葉を投げ続けた。 もう、限界だ。
「こんにちは、お嬢さん」
振り向くと紳士がいた。
「よかったら、この鏡を差し上げよう、ある美女の魂が宿っていて、美しい人しか映さないと言われている物です」 それは本当に景色しか映し出していなかった。
「何で映らない私に、こんな物を……」 いつのまにか紳士は居なかった。

私はビルの屋上に居た。
こんなことしたら沢山の人に迷惑がかかる。 でも、もう逃げ出してしまいたかった。 
靴を脱ごうとした時に、あの鏡が落ちた。 「あれ……」
鏡には、自分の顔が映っていた。 それから、幼い頃の楽しい場面、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんと遊ぶ自分がビデオの様に映し出されていった。
私を愛してくれた、美しく優しい人達。
父と母の姿が映ったとき、
枯れた筈の涙が、また溢れ出していた。
ファンタジー
公開:22/01/12 07:05

ちさとりゅうじ( 神奈川 東京 )

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始めました。
少し長めのショートショート置いてあります。 現在、お休み中です。
書き散らかしています。 研究研鑽中につき、ご勘弁下さい。 コメントには必ず返信するつもりでいます。 私のは気にしないでください^_^

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