俯瞰と仰視

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風になびくススキの音がかすかに聞こえる。
目を大きく見開いて辺りを見つめたが、一面、漆黒の闇であった。ただ、風が吹いて顔に当たっているのだが、頬に風は感じない。ススキの揺れる音だけは聞こえる。
「誰かいませんか」と大声で叫んだが、返事はなく、ただ、ススキが風で揺れる音だけが聞こえる。
その内、自分の胸の方から非常に強い光が照らされるのを感じた。
その光の中に懐中電灯を私に向ける小さな男の子と女の子がいるのがわかった。私はその2人に近づいていく。
その男の子と目が合った瞬間、光り輝く白い小さな鱗が、私を包み込むように漆黒一面に広がっていった。
目の前の眩しさが和らぐと、プラネタリウムでしか見たことのない満天の星空が見えた。
そこにはススキ野で横たわり、星空を見上げている自分がいた。
ススキを揺らす風を今度は頬で感じる事が出来た。
「あぁ、生きている」とほっとした表情で言いながら目を瞑った。
ファンタジー
公開:21/09/12 13:17
更新:21/09/13 14:44

ひまわり広場( 神奈川県川崎市 )

産婦人科専門医/指導医
@sanadakuma
tama-himawari3w.com
身体は日々の食事で出来ている。
妊婦さんにも食事の重要性について情報提供しています。
ダイエット中の方々にも食事・睡眠・運動の重要性について情報発信しています。
自身が「愛着障害」であることに気付き、もう一人の自分と上手に共生しています。
自分が、自分の『安全基地』になることが生きていくための拠り所なのかもしれない。
科学的な視点からの表現も交えて、ショートショートストーリーを作っています。

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