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物心ついた時から私の左手中指に棘がある。
バラの棘のような形をしているが痛くはない。
どうも自分にしか見えないようだ。左利きだった私は小さい時に字を書くのを右手に直された。
左手で鉛筆を握る時に痛かったので直されて良かった。
その時は棘は見えていなかった。

ある日、妻に甘える長男と次男を眺めていた時、
(あれ、俺ってこの子達みたいに母親にべったり甘えたっけ)
と自分が母親に甘えた記憶が無いことに気が付いた。
その時、左指の棘が疼き始めた。
その棘の中に、幼少期の自分がいるのが見えた。義理の祖母に甘える自分がいた。
それを遠くから眺める母親が見えた。母親は微笑むこともなく、じっと私を見ていた。
近寄ろうともしなかった。

母親との「愛着形成」は1歳半ぐらいまでに確立される。当然、自分の記憶には残らない。

でも、私はこの棘が愛着障害の負の連鎖を断ち切ってくれるかもしれないと思った。
ファンタジー
公開:21/09/12 08:17
更新:21/09/13 14:51

ひまわり広場( 神奈川県川崎市 )

産婦人科専門医/指導医
@sanadakuma
tama-himawari3w.com
身体は日々の食事で出来ている。
妊婦さんにも食事の重要性について情報提供しています。
ダイエット中の方々にも食事・睡眠・運動の重要性について情報発信しています。
自身が「愛着障害」であることに気付き、もう一人の自分と上手に共生しています。
自分が、自分の『安全基地』になることが生きていくための拠り所なのかもしれない。
科学的な視点からの表現も交えて、ショートショートストーリーを作っています。

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