枕返し返し

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最近、この界隈には妖怪が出るという。
「枕返し」が次々と住民の枕を返しているというのだ。
まさか私の所には来ないだろう、それどころじゃない。
キャリアウーマンとして、昇進を賭けた最大のチャンスなのだ。
仕事が佳境を迎えて残業が続き、生活が乱れに乱れている事は分かっている。
私は、完全に油断していた。

ある夜。
私は枕が引き抜かれる感覚を覚えた。
…やられた。枕返しだ。
思った時には遅かった。枕を返されてしまう!

「うわ、臭っ!!」

苦しげなあの妖怪の声を、私は忘れない。
髪を乾かさずに寝た結果、雑菌が繁殖した枕は異常な匂いを発していたのだ。

あの日以来、枕返しの被害は聞かなくなった。
でも、私は待っているのだ、枕返しが帰ってくる日を。
枕の匂いで妖怪を撃退したなんて言えない、女として。
あんな枕にはもうしない。だから、帰ってきて。枕返しよ。
ホラー
公開:21/09/12 18:00
更新:21/09/12 11:05

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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