4
6

(ドアノブに掛けといたからね。後で食べなさい)
昼間に母からそんなメールが届いた。
仕事から帰って来ると、メールの通り、玄関のドアノブに手鍋入りの袋が下げてあった。
中を開けるとそこには好物の肉じゃが。途端に心が暖まってきた。
まるで今日俺が上司から怒られたことを知っていたかの様なタイミングだ。
この肉じゃがが無ければ、多分今日はコンビニでつまみとビールを買って一人寂しい晩酌だっただろう。まっすぐ帰ってきて本当によかった。
たまにこのアパートまでやって来て、飯やら家事やらをやってくれるお袋だけど、その時は煩わしいと感じてしまう罰当たりな俺。
逆に顔を会わさず、こうやって袋に入れてドアノブに掛けてくれる方が、有り難みが染みた。
「うん、旨い」
今宵の肉じゃがは格別だった。味と有り難みがしっかりと染みていた。
流石、お袋の味。お袋の袋がドアノブに掛けてある度に、俺の心は満たされていくのだった。
その他
公開:21/09/13 17:01

セイロンティー( 鹿児島 )

初めまして。昔から小説を書くのが好きでした。ショートショートの魅力に取り憑かれ、日々ネタ探しに奔走する毎日です。
小説のコンセプトは【ドアノブの静電気くらいの刺激を貴方に】です。
皆様、どうぞ宜しくお願い致します。

※XにてKindleでミステリーでハートフルなコメディ小説を販売しています!

X
https://twitter.com/K0TvdKqCqJYL1JK?s=09

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容