神様とケチャップ

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 私は悪くない。私の方がずっと前から好きだったのに、あとから出てきて彼のことを奪ったあの女が悪いのよ。私は血で真っ赤に染まったシャツを隠しながら走って逃げる。
 やってやった! これで彼は私のもの。
 目の前が真っ白になった。

 私は悪くない。私の方がずっと前から好きだったのに、あとから出てきて彼のことを奪ったあの女が悪いのよ。私はケチャップで真っ赤に染まったシャツを隠しながら走って逃げる。
 やってやった! あの高いブランド物のワンピース、汚してやった! ……え? ケチャップ? なんだかせこすぎじゃない?
「よし、こっちでいこう」
 突然、空から声が降ってくる。
「誰?」
「この世界の神様だよ」
「ちょっと! ケチャップはどうかと思うわよ」
「大丈夫、大丈夫、きっとイケる!」

 売れない作家はノートパソコンを閉じると布団に潜り込んだ。一年後、この作品がベストセラーになるとも知らずに。
その他
公開:21/09/13 14:12

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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