韋駄天と呼ばれた男

男子１００ｍ世界陸上大会で、驚異的な記録が生まれた。９秒０３。世界記録の９秒５８を圧倒的に上回るとんでもない記録だ。その記録を作った男の名は、島田俊一。最初、この驚異的な記録が生まれた時に測定ミスなのか、それともドーピングをやっているのかという疑惑が出た。しかしもちろんそんな事はなく、この９秒０３という記録は、島田の純粋な記録である。

「島田選手。世界新記録おめでとうございます。何か一言感想をお聞かせください」
「自分でもこんな記録が出せた事に驚きを隠せません。まさか自分が世界記録を持つだなんて夢のようです」
「早く走る為の秘訣のようなものはありますか？」
「噛まれて怪我をした事があるので、僕は犬が大嫌いなんです。後ろから犬が追いかけてきていると思うと、恐怖で足が速くなりました」

韋駄天と呼ばれた男の足の速さの秘密は、犬だった。このインタビュー内容は、世界中で翻訳されて広まった。