年寄りの冷や水

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「オリンピックで注目を集めたスケボウなるものを試してみるかな」

老人は買ったばかりの真新しいスケートボードに片足を乗せた。次の瞬間大股開きになりおもいっきりコケた。

「うぬぬ板切れの分際でこのわしを馬鹿にしおって」
老人は杖を頼りに起き上がり、もう一度震える足をボードの上に乗せた。

そしてもう一度派手にコケた。

「ははは、爺さん。無理は止めなよ」
「なにを。何かを始めるのに遅いという事もなかろう。成長したわしの姿を刮目して待て」
といいつつネットの動画で見たプッシュという初心者の練習法を試そうとして、三度目のコケた姿をさらしてしまった。

「この板きれは魔物か」
「あーもう見てられないなぁ」
尻もちをつく老人をしり目に、通りがかった青年がスケボーを借りて華麗にオーリーを決めた。

「華麗じゃのう。わしは加齢じゃ」
老人はすべてを悟りスケボーをかかえてすごすごと立ち去っていった。
その他
公開:21/09/12 17:07

三田シャケ

がんばってたくさんの作品を書きたいです!
よろしくおねがいします。
 

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