時よ止まれ

「時よ止まれ」
そう呟くだけで俺は時を止められる。まるで停止ボタンを押したかのように世界がストップする。
ただし停止した世界では俺も動けない。また、時間停止がいつ解除されるかも分からない。
にも拘らず俺はよく「時よ止まれ」と呟いた。
考える時間が足りない時、忙しい時、目の前の光景をもっと見ていたい時なんかに呟く。
今だってそうだ。深夜のコンビニバイトで休憩時間がもっと欲しくて呟いた。
いつもなら体感時間で１０分程度。長くても１時間程度の停止だが今回はやけに長い…もう半日くらいは止まっている気がする。
もういい加減に動いてくれないだろうか？停止状態にももう飽きてきた。
さっきから動け動けと命じてみるも、効果はない。本当に一体いつになったら時間停止は解除されるのだろう…

『もしもし！救急車をお願いします！さっき同僚が何か呟いた瞬間から息をしていないんです！それに心臓も止まっているみたいで…』